6.ハンディキャップルームについて

1. さまざまな呼称

一般的な呼称・・・ ≪Handicapped room ハンディキャップルーム≫
室内の一部において障がいのあるお客様に使いやすい配慮や設計された客室をいいます。

しかし、国、地域、ホテルによって、その呼称は異なります。

例)ハンディキャップルーム(Handicapped room)、アクセシブルルーム(Accessible room)、ユニバーサルルーム(Universal room)、ADAルーム(ADA room)等です。

※ADA roomは、アメリカのADA法(障がいをもつアメリカ人法)に基づく呼称です。
ハワイでは、ADA roomが一般的な呼称となっており、アメリカ以外の国では通じません。

※日本で生まれた呼称《バリアフリールーム》は、海外では通じません。

また、最近の日本では、障がいのあるお客様の利用に限定をせず、高齢者などにも幅広く利用しやすいように、ユニバーサルデザインの概念を取り入れた≪UDルーム≫≪ユニバーサルルーム≫または≪ハートフルルーム≫と呼称したホテル、旅館も増えてきています。

コラム バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
バリアフリー対応の設備の対象は「障がい者・高齢者」であり、安全に円滑に利用できるように、生活に障がいとなる物理的な障壁を取り除く。
ユニバーサルデザインの対象は、「全ての人」であり、多くの方に使いやすい設備を備える。

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2. ハンディキャップルームの特徴

日本と海外の主な共通点は次の通りです。

  • バスルームが通常のお部屋より少し広めのスペースを取っている
  • トイレ、バスルームへの手すりの設置
  • 部屋内の段差解消をし、車いすで移動しやすくしている
  • 目の不自由なお客様のために客室番号の点字表示
  • 耳の不自由なお客様の為の設備の貸し出し

しかし、全体的には日本と海外の配慮は異なり、さらに、国ごと、ホテル、旅館により配慮されている設備の内容も異なるため、お客様が使いやすい設備が備わっているかどうか、宿泊先への十分な確認は必須です。

1) 日本
2006年「バリアフリー新法」の制定により、客室総数50以上のホテルや旅館に対し「車いす利用者の客室」の設置が義務付けられ、その際、客室の扉の幅を80センチ以上とする規定などが生まれました。
しかし、部屋の広さやデザイン(設備)に関する規定はない。一般的に共通しているのは、室内では車いすで行動できるスペースと段差解消がなされ、トイレ・浴室・洗面所部分では手すりの設置や車いすスペースなどで配慮がされている。特に水周りでは、シャワーの高さ、シャワーチェア、洗面台の広さ、浴槽での腰かけスペースなど細かい配慮がなされている。室内のドアを引き戸に配慮されている場合もある。
昨今、一部旅館においては、浴室に介助用の設備を備えているところもある。

2) 海外
国により部屋の設計や配慮に違いはありますが、次のような一般的な共通点があります。

  • 風呂やトイレが普通のお部屋より広い
  • エキストラベッドの搬入不可のホテルもある(車いすで室内移動ができなくなる為)
  • ツインではなく、ダブルベッド1台の部屋が多い(車いす移動スペース確保の為)
  • ハンディキャップルームが希望の部屋のグレード、カテゴリーに設置されていない場合もある

3) 比較例・・・特にアメリカ系とヨーロッパ系のホテルでは配慮に違いがあります。

●アメリカ
部屋は低層階とは限っていない。エレベーター近くに部屋を設置する配慮がされている場合もある。アメリカ系のアクセシブルルームでは、自分で操作できる人を想定したものが多く、浴室はバスタブではなく、シャワーだけのところが多い。重度の障がい者をもち介助者が入浴を手伝う場合は、バスタブのある普通の部屋のほうが使いやすい。
●ヨーロッパ
部屋はロビー階や低層階にあることが多い。扉幅は広めだが、実際の部屋の広さはそれほど広くないことが多い。バスルームも手すり程度でシャワーチェアの用意がないなど、設備が十分整っていないホテルもある。ホテルの入り口に段差がある場合も多い。
バスタブは、ユニットバスではなく、床に足つき浴槽を置いたタイプもあり、車いすではない高齢者でも浴槽の縁が高過ぎて利用しにくい場合もある。プチホテルやグレードの低いホテルは部屋が狭く、エレベーターが備わっておらず、ハンディキャップルームがない場合もある。

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3. ハンディキャップルームの種類

1) 歩行障がい者対応・・バスタブ付きか、バスタブなしタイプの2タイプに分かれる

①バスタブ付き= 通常のお部屋と同じバスタブ付きで、壁に手すりがついている。
バスルームは段差なし、間口広めである。ハンドシャワーの設備であることが多い。ハワイにおいてはドアが引き戸タイプのホテルもある。
②バスタブ無し(呼称:ロールインシャワー)
バスタブを取り外した状態。 壁についているシャワーの下にシャワーチェアを置き、車いすで移乗しやすい作りとなっている。シャワーのある壁に最初から椅子が折り畳んで備え付けの場合もある。その場合、その壁が背もたれの役割となる。
ハンドシャワータイプが多い。

2) 聴覚障がい者対応の設備

①タイプ式入力電話(TDD=Telephone Device for Deaf)
ライトの点滅で着信を知らせ、相手の言葉はディスプレイに表示される。
話すかわりにキーを打って会話ができるというもの。但し、アルファベット表示のみ。
②点滅式火災報知機(Visual Smoke Detector)
耳の不自由な人の為の火災報知機。強力なストロボで、火災の発生を知らせる。
③電話点滅設備,又はバイブレーター付きアラートマスター(Alertmaster with Vibrator)
ドアベルや電話のベル、目覚まし時計などをバイブレーターやライトの点滅で知らせる。
④ドアノック報知器(Door Knock Alert)
ドアに取り付けておくと、来客をライトの点滅で知らせたり、無線接続しているバイブレーターの振動で知らせたりする。

3) 聴覚障がい者対応の設備
①部屋番号が点字表示、室内設備の点字表示
②エレベーター内の音声案内、階数ボタンの点字表示

4) その他、配慮されていることがある設備一例

①部屋のドアの低いのぞき穴
通常150cm前後の高さにあるのぞき穴が車いす目線に合わせ、約110cm前後の高さに設けている
②バーの低いクローゼット
車いすで手が届く高さにバーが設置されているクローゼット
③床から高めのコンセント
車いすから楽に手が届く床上40cmくらいの高さにコンセントの設置をしている
④スタンドのスイッチ
通常小さなつまみを回すタイプが多いが、指や握力の力が弱くてもオン・オフができるプッシュ式タイプがある。
⑤洗面台
車いすでも使いやすいように洗面台の下がオープンスペースになっている。
また高さも低めに設置してある場合や高さが調節できるようになっている場合もある。
⑥トイレ
背後とサイド、あるいはサイドのみに、つかまれる手すりが設置されている。
立ち上がり便座の貸し出しがある場合もある。
⑦シャワーチェア
バスタブやシャワールームに置く椅子。背もたれがないタイプの場合もある。
⑧バスタブ・トランスファーベンチ
バスタブの外から中へかけて置かれるベンチで、座った状態で徐々にずれていけばバスタブに出入りできる。

トピックス 障がい者のための国際シンボルマーク(ISO-7000)

日頃よく見かける下のマークは、「国際障がい者リハビリテーション協会」(Rehabilitation International=障がい者のリハビリテーション事業を実施する世界80数カ国の団体および国際団体から構成)によって、障がい者が容易に利用できる建物・施設であることを示すシンボルマークとして採択決定されたものです。

このマークは、「国際標準化機構」(ISO=International Organization for Standardization) の公共案内図記号として昭和59年(1984年)に「ISO-7000」として制定されました。


マークは、
色はブルーか黒地に
白のマーク又は
その逆とする。

国際シンボルマークを掲示するための最低条件

玄関
地面と同じ高さにするほか、階段のかわりにまたは階段のほかにランプ(傾斜路)を設置する。
出入口
80cm以上開くものとする。回転ドアの場合は別の入口を併設する
ランプ
傾斜は1/12 (こうばい勾配4.5°強) 以下とする。室内外を問わず、階段のかわりにまたは階段のほかに、ランプを設置する。
通路・廊下
130㎝以上の幅とする。
トイレ
利用しやすい場所にあり、外開きドアで、仕切り内部が広く、手すりが付いたものとする。
エレベーター
入口幅は80cm以上とする。

(出典:「体の不自由な人びとの福祉」財団法人テクノエイド協会)

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