(1)知的障がい、精神障がいのあるお客様とは |
知的に障がいのあるお客様は、むずかしい言葉の説明が理解しにくいので、ゆっくりと分かりやすい言葉、表現でお話しすることが大切です。環境が変わったり、生活のリズムが違ったりすると、不安になったり、パニック状態になることもありますが、あわてず、もう一度最初から説明するようにしましよう。知的障がいには、最重度・重度・中度・軽度といった程度や自閉症、ダウン症などの内容による分け方がありますが、軽い場合には勤めていることも多く、ひらがなや簡単な漢字を読む方も多くいます。
一方、精神障がいには統合失調症、そううつ病、器質性精神病、神経症などがあります。薬を服用することで、症状の安定を図りながら、ストレスの少ない生活を送ることが大切です。
旅行に関しては無理のない日程でご案内し、疲労のないように配慮することが大切です。そのためには医師の意見と薬の準備は欠かすことができません。 |
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(2)精神疾患や旅行参加がご不安なお客様への応対ポイントと留意点
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- 知的障がいが軽度のお客様には分かりやすい言葉で静かな口調でお話しします。早口や声高は禁物です。
- 落ち着いた気持ちでお話しができるように工夫しましよう。また、ひらがなを書いて説明したり、ゼスチャーを交えるのもよいでしよう。
- 旅行のプランを相談する時は、時間にゆとりをもって、理解していただけるまで、何度でも繰り返し説明することが必要です。
- 付き添いの方ときめ細かな連絡を心がけ、万が一、旅行中に大声をあげる、前の席に座っている人の肩や頭をたたくなどの行為があった場合は、周囲の人に理解していただけるように素早い対応が必要です。(知的障がい)
- 現地では抽象的な説明や曖昧な表現は避けて、具体的にご案内しましょう。たとえば、集合場所を説明するときは「あそこ」「そちら」という表現は避け、面倒だと思わずにその場所まで行って「ここです」と正確に伝えます。(知的障がい)
- 医薬品などを機内持ち込みにあたり、英文の処方箋や成分表、証明書が必要になることがあるので、準備をする。
- 向精神薬には麻薬に識別されるものもあり、海外旅行の場合は申請が必要な場合があるので、事前に確認をする。(参照:ハートフルシート「手配篇」)
- 通常、旅行中のご案内事項が理解いただけない場合、多動などのため行動を常に注視していなければならない場合には普段世話をしている保護者や介助者の同行が必要となります。
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◆宿泊施設において配慮する点
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障がいの種別 |
項 目 |
チェック内容 |
知的障がい
のお客様 |
客室・通路など |
- 複雑に入り組んだ構造になっていないか
- 多人数で客室が使えるか
- 危険な場所に立ち入らないようにしてもらえるか
- 就寝時は、必ず施錠し、再確認をしてもらう
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◆航空機を利用する際の留意点
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場面 |
チェック内容 |
チェックインカウンター |
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お客様の特別な手配に関する予約を航空会社に早めに確認する。
(座席の指定、機内用車いす、特別食など)
- 大事な薬については、受託手荷物の紛失を考慮し、できる限り機内へ持ち込むようにする。
その際、市販の薬であれば購入時の箱などに入れたまま、処方された薬であれば、処方された袋のまま持参する。
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機内 |
- 同行添乗員は客室乗務員と特別な手配内容について確認をし、お客様のコンディションを連絡する
- トランジットで途中待機となる場合には機内に留まるのか、待合室に行くのかをお客様に早めにお知らせする。
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到着空港 |
- 入国審査の際、審査係官の質問に対する援助が必要な場合には適切な対応をとる。
- お客様の中には抗てんかん薬・などの医薬品を相当量持参している場合もある。税関での検査で薬品の内容について聞かれる場合に備えて、英文の処方箋を準備する。※
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その他 |
- 現地旅行会社の係員とは特別な手配内容について早めに確認をしておく。
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※国際線利用時のみ
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◆船舶を利用する際の留意点
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場面 |
チェック内容 |
乗船・下船 |
- お客様の中には抗てんかん薬などの医薬品を相当量持参している場合もある。海外の場合は、税関検査で薬品の内容について聞かれる場合に備えて、英文の処方箋等を準備する。
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(3)精神疾患や旅行参加がご不安なお客様に起こりうる事故・トラブル |
- 多動性の方は(突発的に動く方)、介助者がショッピングに気を取られている隙などに、行方不明になる事例が報告されている。
- 添乗員は、全体のコントロールをするのが役割であるので、個々の障がい者については、誰が責任を持つかを明確にしておかなければなりません。
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(4) Q&A
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Q. |
知的障がい15名を含む40名のハワイ旅行。
米国のESTA(電子渡航認証システム)の認証を受ける場合どうなるのか? |
A. |
(1)米国のESTA(電子渡航認証システム)への申請書に、精神障がいに関する質問事項がありますが、"他の人の財物、安全または福利を脅かす可能性"であるので、多くの場合は該当しない。
(2)入国を実際に許可するのは、あくまでもその国の入国審査官であり、これまで入国できなかったという事例は報告されていない。観光目的であるならば、入国目的、期間を説明できる責任者あるいは同行者がいるようにする。
(3)入国目的や日数など求められる説明に答えられれば一人でも問題はないでしょう。ただ重度の知的障がい者には、介護者がつくことを求められる場合があります。 |
Q. |
パスポートを取得するにあたり、同行する家族の代筆で可能ですか。 |
A. |
できる限り渡航者本人の署名が望ましいとされています。なぜならば、パスポートは取得後5年から10年間有効であり、今回の旅行と今後の旅行では同行者が常に同じ人であるとは限りません。また、単独での旅行の可能性もあるからです。
なお、パスポートへの署名は、海外渡航に関するすべての署名(ビザ申請書へのサイン、旅行小切手のサイン、出入国カードのサイン、ホテルのチェックインのサインなど)のもとになるので、書き慣れた書体がよいでしょう。なお、同行者がパスポートに代筆で署名した場合には、原則として他のすべての書類にも代筆することになります。 |
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